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思いやりに属する想像力

今回は、空想と想像の違いから、想像することの大切さ、それも思いやりという想像力の大切さについてお話したいと思います。

辞書を引くと
空想=「現実にはありそうにもないことをあれこれ頭の中で想像すること」
想像=「頭の中に思い描くこと。既知の事柄をもとにして推し量ったり、現実にはありえないことを頭の中だけで思ったりすること」
とあります。

想像の範疇に空想も入っているようです。

小説を書く時に使う場合、「ありそうにもないこと」なのか、「既知の事柄をもとにして」なのか、というのがポイントになるでしょう。

小説の場合、空想も大事です。
空想から始まるといっても良いくらいかもしれません。

しかし、空想だけでは小説は書けません。
無から有を作るのは空想ですが、それに生命を吹き込むのは想像です。

アマチュア小説で、登場人物の言動に必然性や説得力がなかったり、作者の都合のいいように操られている人物を目にしたことがある方は多いでしょう。
心当たりのある方も少なくはないかもしれません。

その原因は、想像力の欠如です。

世界を作り、登場人物を生み出し、彼らを動かしていくことは空想だけでできます。
ただし、彼らが作者の都合通りにしか動かない「人形」になるのか、一個の人格を持った「人間」になるのかは、作者の想像力によって決定されます。

想像力がなければ、紙に書かれただけのペラペラの「人形」にすぎません。
想像力があれば、読者は自分と同じ人間と感じ、感情移入をしてくれます。生きた「人間」と認められるのです。そうなれば、作者が書く以上に読者の中でその人物は動いてくれます。

このように想像力は大切です。想像力を持ちましょう!

と言われても、具体性がなくて、どうしたらよいかさっぱり分かりませんね。

想像力と言っても漠然としていますし、どうすれば空想が想像になるのか、それがはっきりしないことにはどうすることもできません。

私がよく言うのは、「思いやりに属する想像力」です。
想像しろと言っても、小説を作る時点で想像しているので、もうしていると言われてしまうのです。
だから私は、思いやりという想像力を使ってくれと言います。

思いやりというのは、ご存じの通り「その人の身になって考えること」です。
「その人」とは「登場人物」です。
主人公だけではありません。すべての登場人物です。

実は、これができていない人は意外と多いのです。

ストーリーを進めること、自分の意図している方向にストーリーを持っていくこと、作者はそういう意識で書き進めようとしますから、自分の意図したように話し、行動させようとするのです。
まあ当然のことです。

そして、主人公には自分も感情移入しているので、ほぼ、その人の身になって考えることはできるのですが、他の人物になると、都合のいいように動かしてしまう傾向があります。

その結果、読者が納得できない行動をし、首をかしげるようなセリフを言い、感情移入ができない「人形」と化してしまうのです。

「その人物の立場に立って考え、その人物だったら言うべきことを言わせ、すべき行動を取らせる」
そうすればいいのです。
が、口で言うのは楽ですが、実践してもらうのは楽ではありません。

大切さは分かると思います。
誰だって、感情移入できない人形よりは共感できる人間を書きたいはずです。

大切さを説明し、書く時にその人物の身になって考えてください、と言えば、その意識を持って書いてくれそうですが、なかなかそうはいきません。
これは得手不得手がはっきり出ます。
性格が左右するからです。

できる人は上の説明だけで、できるようになっていきます。
苦手な方は、なかなかうまくいきません。

うまくいかなくてもやるしかないのですから、やってもらうしかありません。
人によって得手不得手はありますが、なるべく先を急がず、登場人物を一個の人間としてまず作者が愛し、丁寧に書いていけばできるはずです。
苦手な方は、人物の設定を人よりも詳しくやってみてください。それで大分変わるはずです。

私が無責任に言えるのはこのくらいです。


ちなみに、私が責任を持ってそれを直そうとする場合は、おかしいと思う一場面を引き合いに出して、いちいち細かく質問していきます。
そうすると、いかに何も考えずに人物を動かしていたかが分かってしまいます。
その後、今度はおかしなことをした人物の身になって考えてもらいます。
そして、同じ場面を書いてもらいます。
それによっていかに変わるか実感してもらえれば、意識もできてきます。

成功体験を積んでもらうというマネジメントの手法ですね。
これは重要なことです。
こうすればうまくいく、ということが分かれば、人は自信を持って変われますから。



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